010 個人情報保護と医療機関


医療分野は,取り扱う個人情報の性質や利用方法から,
情報の厳格な取扱いが特に求められる分野です.


このことは,厚生労働省のガイドラインでも,国会の付帯決議でも
明記されています.


医療・介護関係の事業者は,法の規定を厳格に守るだけでなく,
法の下の義務でないことについても,達成への努力を要求される場合があります.

個人情報の扱い:生存していない人

本来この法律が対象とするのは,生存している人の情報です.目的外利用や第三者への提供に関する本人の同意も,本人が生存していることが前提ですね. しかし医療機関は,死亡した人の情報が集まりやすいという点で,特別な存在ということができます. 例えば患者が死亡した時

個人情報を研究などに活用する場合

医療分野では,学術研究の進歩のために個人の診療情報が非常に重要になる場合があります.個人情報保護の規定をこうした分野で厳格に適用してしまうと,反対にや社会全体の利益が損なわれる恐れがあります. このため,大学など学術の研究を目的にする機関が,学術研究への利

医療分野の個人情報ガイドライン

厚生労働省は,厚生労働大臣が個人情報保護法を執行する際の基準として, 「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」を定めています(『医療分野のガイドライン』と略します). これは法律の対象となる病院や薬局,介護サービス事業者な

個人情報と医療の現場

医療の現場での個人情報の代表的なものは診療記録です. 患者を検査したデータも,それに関する医師の所見も患者の個人情報です.診療記録は媒体に関わらず個人データに該当します. また,検査などで患者から採取した血液などの検体も個人情報であるため,利用する場合はそ

個人情報の扱い:患者

患者に関する個人情報を利用する場合,その目的はわかりやすく特定して,患者自身に通知・公表します. その際医療機関として望ましい通知・公表の方法は,主な利用目的を院内に掲示する形で患者本人に公表することです. この内容の中には,その情報を利用して提供する医

個人情報:病室の名札や院内での呼び出し

入院患者のお見舞いに行くと,病室やベッドに患者の名前が表示されています.これらは,患者の取り違えなどの危険を防止し,安全な医療を行なうために必要なものですが,患者の要望に応じて何らかの配慮が必要な場合があります. 入院する際,患者が希望すれば病室の入り口の

個人情報の扱い:見舞客や家族の問い合わせ

病院に見舞いに来た方から,入院患者の病室を尋ねられた場合,患者がそれに応じるかどうかを予め確認しておくことも必要です.患者の意思を無視した対応は問題になる可能性があります. また,家族や親族からの病状の問い合わせについても患者が同意しない場合があります.ま

個人情報の利用:利用目的の知らせ方

個人情報保護法では,取得する個人情報の利用目的をできる限り特定し,それを通知しなければなりません. 患者に関する情報の利用目的を本人に通知するにあたっては,その目的をできるだけわかりやすい形で定めることが必要です.従って,医療機関は代表的な利用目的を病院内

個人情報の利用:目的に関する患者の同意

個人情報の利用目的は,わかりやすい形で取り決めて通知・公表できれば,患者1人1人から同意を取る必要はありません.方法としては,病院内のポスターによる掲示,受付で手渡すパンフレットが代表的です.ただし,一方的に通知・公表するだけでなく,診療の際にそれらを患者が

個人情報の利用(例外):本人の同意を得ていない場合

次の場合は例外として,あらかじめ本人の同意を得なくても,明示された利用目的以外に保有個人情報の利用・提供をすることができます. 1.法令に基づく場合(医療法に基づく立ち入り検査等) 2.人の生命・身体・財産の保護のために必要であり,かつ本人の同意を得るこ